空中散歩

12.星の欠片



 カウンター席しかないとはいえ、客はみんな、男性の一人客ばかりである。彼らは席に着くと、迷うこともなく注文し、黙々と食べ、さっさと代金を払って店を出ていくため、少し待っただけですんなりと店内に入ることが出来た。
 成海は醤油ラーメンを注文してから、きょろきょろと周囲を見回した。
 兄に連れられてここに来たのは、今から五年以上前のことなのに、見れば見るほどその時と何も変わりがない。
 町の様子は、新しいビルが建っていたり、よく行っていた店が違う店になっていたりと、成海が住んでいた頃と少しずつ異なっているし、自分の側でも、あの頃と変わってしまったことは、数えきれないほどたくさんある。だというのに、この場所だけは、時間を止めて成海のことを待っていたような──そんな錯覚に襲われそうになるほど、置かれた調味料に至るまで変わりがなかった。
 カウンターの向こうの厨房では、店主と二人の店員が、忙しそうだがてきぱきとした動作で、麺の湯を切ったり、丼に具を乗せたりしている。六十代くらいに見える店主は、口をへの字にしたちょっと厳つい顔つきで、成海たちが店に入った時から、ずっと黙ったままだ。
 ここのおじさんも変わらないなあー、と成海は少しくすっと笑った。
 兄に連れてきてもらった当時、成海は中学生になったばかりで、店員というものはすべからく客に対して愛想よく笑いかけてくれるもの、という認識があった。だから、いらっしゃいませも言わないこの店主の態度には、相当困惑したのだった。
 これはいわゆる頑固オヤジの店というやつではと怖くなり、下手な食べ方をしたら怒鳴られるんじゃないかとびくびくしながらラーメンをすすっていたら、あまり空気を読むことが得意ではない兄に、「なんだお前、腹の調子でも悪いのか。トイレはあそこだぞ」 などと言われて、余計に恥ずかしい思いをさせられたのである。
 考えれば考えるほどロクな思い出ではないのに、なぜか切ないほどの懐かしさばかりが込み上げる。
「はいお待ち―。醤油と味噌大盛りね」
 店員の声で、成海は回想を中断した。意識を戻すと、美味しそうな湯気をもわっと立てた丼が自分の前に置かれたところだった。ちなみに味噌大盛りは晃星の注文だ。どちらかというとがっちりした体格の誠とは違い、晃星はすらりとした細身なのに、食べる量はそう変わらないらしい。不可解な。
「ん? なに、成海ちゃん?」
 早速割り箸をぱちんと割って、丼の中の麺をスープの中からすくい上げた晃星が、まじまじと眺めている成海に気づいて問いかける。しかしこの彼は、どういうわけかそんな仕草まで不思議とサマになっているのだった。なぜなのだろうと考えて、そちらの理由はすぐに判った。
 箸の持ち方とか、姿勢とか、そういう基本的な所作が、非常に整って綺麗だからだ。だから、たとえ食べているのがラーメンでも、なんとなく洗練されているように見えてしまうのだ。きっと、幼少期にきっちりと躾けられて、身についているのだろう。外見と普段の言動からは、あまりそういう部分は垣間見えないのだが。
「なんか今、俺に対してちょっと失礼なこと考えてない?」
 晃星は、妙なところで鋭さを発揮する。成海は慌てて箸を取って、手を合わせた。
「そんなことはないです。いただきます。晃星くんも、早く食べないと麺が伸びますよ」
「誤魔化して……」
 ぶつぶつ言いながら、前を向いて箸で取った麺を食べ始める。成海もまずスープを口に入れてみて、うん、この味だと思い出して嬉しくなった。味覚もちゃんと、記憶というものを保有しているらしい。
「美味しい」
 昔、兄と来た時と同じ感想を零すと、隣の晃星がにこりとした。その顔に、兄の笑顔がダブって見える。
 変わらない店、変わらない店主、変わらない味、変わらない言葉──でも、すぐ横にいる人だけが違う。
「…………」
 少し、胸がぎゅっと締めつけられるような気持ちがした。口元の笑みが消えないうちに、目線をラーメンに戻して箸を動かす。晃星は気づかなかったようだ。
「うん、美味いね。誠が常連になるだけのことはある」
 そう言って、にやっと笑う。
「店は古くて汚くて、親父の愛想も悪いけど、味は確かだ。成海ちゃんの言った通りだね」
 続けられた言葉に、成海は飛び上がりそうになった。晃星の声は普通の音量だったけれど、一人客ばかりで会話もない店内では、必要以上によく響く。二人の店員は下を向いて笑いをこらえるくらいだったが、店主からはじろっと視線を送られてしまった。
 赤くなって肩をすぼめ、ごめんなさい、というつもりで、わずかに頭を下げる。そんな成海に構わずに、隣の晃星はまったく知らんぷりでラーメンを堪能しきっていた。絶対にまた面白がっている。憎たらしい。
 と。
「……あんた」
 ずっと黙っていた店主が、成海をまっすぐ見て、いきなり声を出した。
 てっきり怒られるかと思って身を縮めたが、こちらに向けられる店主の表情はどこか訝しげなものだった。いや、何かを一生懸命思い出そうとしているような、といったほうが正確かもしれない。成海をじっと見つめて、眉根を寄せている。

「あんたもしかして、天野君の妹じゃないか」

 そう言われて驚いた。隣の晃星の手もぴたりと止まる。
「あ、はい、そうです。あの……どうして」
「一度、この店に来ただろう」
 またまたびっくりだ。たった一度、それも数年も前に来ただけの成海を、この人は覚えていたのだろうか。
 口を結んで仕事をしていた時は、いかにも頑固そうで怒ると怖そうな年配の男性だったが、こうして向き合って話すと、不思議とそういった印象がすうっと薄れていくようだった。目にはちゃんと穏やかで温かいものがあり、話し方は少々ぶっきらぼうではあるものの、頭ごなしに叱りつけるような気の短さはなさそうだ。
「はい。もう大分前のことですけど」
「よく覚えてるよ。あの天野君が小さな女の子連れてきて、デレデレしとったからね」
「…………」
 そんなにも強烈に記憶に残るほど、デレデレしてましたか。
「兄はよくここに来ていたんですよね?」
「うん、高校生のうちからね。大学生になっても、就職してからもよく来てたよ。多い時は週に何度か」
「そ、そんなに?」
 おかしいな。両親が生きていた頃、兄は家でも普通に食事を摂っていたのだが。ラーメンを食べて、夕飯も食べていたということだろうか。そんな食生活をしていたら、成人病になっちゃうよ。
「まあちょっと、しばらく足が遠のいたこともあったんだが……」
 店主はそこで言いにくそうに曖昧に言葉を濁した。きっと、両親が事故で亡くなった、三年前のことを言っているのだろう。誠の身に降りかかった突然の不慮の出来事を、この人は知っているんだ、と成海は思った。新聞やニュースでも名前入りで報じられたから、それで知ったのかもしれない。
「あの、引っ越したりして、バタバタしていて」
 成海が言うと、店主は黙って頷いた。他の客や店員のいるところで、余計なことは言うまいという気遣いが感じられる。
「最近、来ないけどね。元気かい」
 その問いには、一拍ほど詰まった。店主の言い方は、常連客の無沙汰を責めるようなものではなく、訥々とした調子ながら、心配するようなものが混じっていたからだ。
「すみません、この頃、忙しくて」
「いや、いいんだいいんだ、元気ならね」
 素っ気ない返事だったが、成海は何か引っかかった。
 店主の視線が、一瞬、成海を通り越して向こうの壁に向かったように思えた。余所に気を取られたというよりも、何かを言いかけたのをまた喉の奥に戻すためにそうした、ように見えた。
「あの」
「うん?」
「いちばん直近で兄がこのお店に来たのはいつ頃でしょう」
「ん? そうだな……」
 店主が考えながら、店の壁に貼られたカレンダーに目をやる。現在は、十一月の面が表に出ているそれを見て、うーんと声を出した。
「春の頃だったと思うがね……三月か、四月か、そのくらい」
「──そうですか」
 息を呑んだことを気づかれないように、下を向いて、スープの中に箸を入れた。麺をすくって、口の中に入れる。あんなにも美味しいと感じたはずだったのに、もう何も味がしない。

 誠が行方不明になったのは、四月の初め。

 来たんだ。
 誠ちゃん、このお店に来たんだ。
 成海の前から姿を消してしまう直前、何かを悩んでいたという時期。その時にここに来た。高校生の頃からよく通っていた馴染みの店へ。店主からもすっかり顔と名前を覚えられて、きっとそれなりの交流もあるだろうこの店へ。
 鼓動ががんがんと高鳴って、頭にまで響いてきそうだ。ああ、でも、今この場で事情を話すわけにはいかない。相手は仕事中だ。手が震えていることも悟られないように。
 テーブルの上にある箸袋には、店の名前と電話番号が記されてあった。成海はそれをきちんと折り畳んで、自分の鞄の中へ大事にしまい込んだ。
 隣の晃星は、ずっと無言で食べ続けていた。


          ***


「さて、これからどうしようか」
 店を出てから晃星に明るい声で訊ねられ、半分上の空だった成海は、ようやくはっと我に返った。
「あ……そうですね」
 携帯を取り出して確認してみたら、時刻はもう二時近くである。
「じゃあ、帰」
「買い物ね、うんわかった」
「え、違」
「地下街に行きたいんだ? じゃあとりあえず駅に行こうか」
 ええー。
 絶対わざとだとしか思えないのだが、こちらの返事を勝手に改変して、晃星はニコニコしながら成海の手を引っ張り、駅に向かって歩き出した。
 ええええー。
 ハタから見ると、手を繋いで仲良く歩いているみたいで、恥ずかしい。あまりスキンシップをとるのに躊躇のなさそうな晃星はこういった行為をなんとも思わないのかもしれないが、成海はいちいち心臓がバクバクしているので、そのあたりをもう少し考慮してもらいたいのだが。
「……行きますから、手を離してもらえますか」
「なんで。いいじゃん。成海ちゃんの手って、小さくて柔らかくてぷにぷにして気持ちいいよね。俺、こうして繋ぐのやみつきになりそう」
 それは痴漢と紙一重の意見に聞こえます。
「これじゃ、駅での男の子と、やっていることがあんまり変わりないですよ」
「失礼な。これはナンパじゃないでしょ。デートのお誘いでしょ」
「そう、かなあ……」
 なんだかよく判らなくなってきた。ナンパとデートの誘いの違いって何だっけ。成海の頭も相当混乱しているらしい。
「それともさ」
 晃星が言って、くるりと振り向く。
「成海ちゃん、俺と一緒にいるの、イヤ?」
「…………」
 にっこり問われて、何も返せない。
 こんな風に訊ねるのはズルくないだろうか。晃星のこの顔、絶対に、「イヤだ」 と返されることはないと判っている顔だ。そりゃ決してイヤではないけれども。
 頬を赤くして下を向き、黙り込むと、晃星も黙った。
 どうせまた笑われるか、からかわれるかだと思ったので、ん? と顔を上げると、すでに彼は再び前方に顔を戻した後だった。もう成海からは、栗色の髪の毛しか見えない。
 その髪の毛に空いた方の手を突っ込んで、晃星が、「うーん」 と唸るのが聞こえた。
「……なんか、マズイ方向に行ってる、気がする……」
 ぼそりとした独り言のような小さな呟きが漏らされたように思ったが、よく判らない。



 電車に乗ったり、歩いたり、途中で寄り道したりして、実際に地下街に到着した頃には、成海はもうすっかりこの状況に疑問を持つことを放棄してしまっていた。
 つまり、楽しくて、なんだかもうどうでもよくなってしまったのだ。
 最初こそ強引だったものの、それ以降の晃星は、ほとんど紳士といってもいいほど礼儀正しく振る舞った。人が多くてぶつかりそうになった時に手を引かれるくらいで、決して馴れ馴れしすぎる態度を取ることはない。海外暮らしが長いからレディーファーストが染みついているのか、いつでもさりげなく上手にエスコートしてくれる。そのくせ、お喋りはやっぱり冗談や軽い調子のものばかりなので、彼と二人で歩きながら、成海はずっと笑いっぱなしだった。
 買い物、といっても、晃星自身は特に買いたいものがあるわけではないのか、地下街を巡っても、男物の洋服や男性が好きそうなショップにはちっとも興味を示さなかった。その代わりに、成海ちゃん、こんなのはどう? とか、この色はいいよね、などと、しきりと勧めてくる。
 勧められても、今の成海には、散財をする余裕がない。可愛いですね、いいですね、と適当な返事をしながら受け流していたのだが、とある店で、マネキンが着ている身体にぴったりとフィットした (しすぎている) マイクロミニのワンピースを晃星がじっと眺めていた時には、硬直しそうになった。
「成海ちゃん、こういう……」
「着ません」
「ぜったい似合うと思うんだけどなあ。とりあえず試着しない?」
「着ません」
「俺がコーディネートするとして……やっぱりなるべく足は出したほうがいいから、下はショートブーツか……」
「着ません!」
 真剣に悩み始めた晃星の背中を押し、なんとかその店を過ぎて、ほっとする。たまたますぐ隣にあったのがアクセサリーショップだったので、ますます安心した。ここならミニスカートを勧められることはあるまい。
「あ、ほらほら、晃星くんに合いそうなピアスがありますよ」
 必死に気を逸らそうとした成海の言葉に、晃星が怪訝そうな顔をする。
「成海ちゃん、俺、ピアスの穴開けてないんだけど」
「えっ、そうなんですか。意外ですね。いかにも……」
「いかにも、なに?」
「…………。いえ、別に」
「いかにもチャラチャラと片耳だけピアスの穴を開けていそう、って言いかけた?」
「いえ、イカの煮物について少し考え事を」
「もう一度聞くけど、成海ちゃんて、俺のこと、ものすごい浮ついた軽薄な男だと思ってるでしょ」
「そんなことは……」
 ごにょごにょと濁し、ちょっとあっち見てきますね、と誤魔化してから晃星の近くを離れて店の奥へと進んだ。逃げるというのもあるが、本当に店内を廻ってみたかったというのもある。
 アクセサリーの類はほとんど持っていない成海だが、それは決して興味がないということではない。節約精神がすっかり身についているとはいえ、女の子としての自分を捨ててしまっているわけではないのだ。こういったものは、見るだけでも充分楽しい。
「かわいいー」
 つい声を出しながら、飾られたネックレスに見入ってしまう。トップの形が花、ハート、リボン、十字架と様々あるが、成海はごくごくシンプルなデザインが好きなので、丸いリング状になった台座に、小さな石がはめ込まれたものに惹かれた。
 これ、いいなあ、と思う。
 しかし値段を見たら一万を超えていたのですぐ撤回した。アクセサリーの相場は知らないが、成海にとってはとんでもない高額商品だ。ごめんなさい、私ごとき者がいいなあと思っていいようなお方ではありませんでしたね、という気分で後ずさる。
 晃星はと見ると、さっきと同じ場所で、ショーケースの中の何かを指しながら、店員と話しているところだった。自分のものを買うのかな、誰かへのプレゼントでも選んでいるのかな、と思い、そこから目を逸らす。だとしたら、なるべく邪魔しないようにしなければ。
 一人で店内をぶらぶらと見て廻りながら、晃星に恋人がいるとしたら、きっとそれは笙子のような、大人っぽい美人なんだろうな、と心の中で思った。

 ──どうしてこんなに、胸が痛いのだろう。


          ***


 結局夕方過ぎまで晃星と一緒に時間を過ごし、夕飯を食べに行こうと誘われたが、また代金は彼持ちになるのかと思うとさすがにそれは固辞して、成海は帰ることにした。
 アパートの近くまで晃星に送ってもらった頃には、空はもう暗くなっていた。上を見上げると、明るい星がちかちかと瞬きはじめている。
「今日はありがとうございました」
 頭を下げて礼を言う。銀行の件もあるが、それよりも、今日一日楽しませてくれたことについて、そう言ったつもりだ。
 そのことに気づいたのかどうなのか、いつも 「そういうのはやめよう」 と言う晃星が、この時はただ、
「うん」
 と微笑んで返事をしただけだった。
「……え、と、じゃあ」
 どう続けていいものか迷って、うろうろと視線を彷徨わせる。肩から下げた鞄の持ち手を握って、次の言葉を探した。
 先週と今日、成海が晃星と会ったのは、銀行との交渉、というはっきりとした目的があったからである。その目的が一応達せられた今、今後連絡をとる必要もなくなる。もう会うこともない。そもそも、成海と彼とは、兄の繋がりでほんのいっとき行動を共にしていたにすぎないのだ。
 ……じゃあまた、とは言えない。
 やっぱりここは、さようなら、と言うべきなのだろう。
「さ」
「今度は俺からメールするからね、成海ちゃん。一件につきいくら、なんて考えないで、ちゃんと返事するんだよ」
 別れの言葉を遮るようにそう言われて、目を見開く。晃星の顔を見ると、彼はいつもと同じように人懐っこい笑顔を浮かべていた。
「それとも電話にしようか。うん、そうだな、バイトが終わってからなら出られるでしょ」
「…………」
 どうして電話? と困惑する。だってもう、用件は済んだはずなのに。気遣っているのか、心配してくれているのか。それとも、誠のことで何かあったらということなのだろうか。
 何も返せないでいる成海に、晃星は少し苦笑した。
 上半身を傾け、成海の顔に自分のそれを寄せる。
「……成海ちゃんの声が聞きたいからね」
 耳元に囁くような声を落とされて、全身がかあっと熱くなった。これは晃星の色仕掛けのパターンだと思っても、顔が赤くなるのは止められない。
「あと、これ」
 ごそごそと晃星が上着のポケットを探り、その中から小さな箱を取り出した。なんだろうと思って見ていると、箱の中から出てきたのは、成海が店でいいなあと見ていたネックレスだ。驚きすぎて、声も出なかった。
 いつの間に?
 固まったままの成海に、晃星が腕を廻して器用にネックレスを装着する。首のすぐ後ろで彼の長い指が動いているのを感じて、血液が沸騰しそうになった。自分の顔のすぐ間近には、細身なのに広い胸板がある。
「晃星くん、こ、これ」
「持ってて」
「こま、困ります、だって」
 こんなの、もらう理由がない。食事を奢ってもらうとか、そういうこととはまったく別の次元の話になってしまう。
「いいから、持ってて。俺はどちらかというと無宗教の方だけど、今はこんな小さなものにでも縋らなきゃ落ち着かない。俺の心の平安のために頼むよ」
 晃星の声はひどく真面目なものに聞こえた。そこに混じるどこか切実な口調に、成海は口を閉ざすしかない。どういう意味なのかまったく判らないが、軽い冗談で言っているようには思えなかった。
 金具を留め終えると、首から下げられたネックレスの石の部分を指の先でそっと触れ、晃星が 「……God bless you.」 と呟く。
 その言葉に反応するように、きらりと何かの光を反射して、石が美しく輝いた。
 ──まるで、夜空に浮かぶ星の欠片みたいだ、と成海は思った。



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