短編17

楽土(3)




「……それでそのまま一週間以上、ガキの面倒みてるってか。まったく甘っちょろい野郎だなあ」
 と苦々しい顔を隠しもせずに言ったのは、イーガルだった。
 イーガルは、アルの盗人稼業の元締めであり、さらに言うなら、アルを六つの時から育ててくれた人物である。アルの手先が器用なことを見込んで、鍵師としての技術を身につけさせ、独り立ちできるようにしてくれたのもイーガルだから、アルにとっては、「恩人」 の一言では言い表せられない存在だ。
 しかしこのイーガル、そろそろ五十に手が届くという年齢になっても意気軒昂で、口が悪く、人相も悪く、おまけにしょっちゅう手が出る。今は住まいを別にしているが、もともとは親子のように一緒に暮らしていた仲でもあるので、お互いの間に遠慮というものはまったくなかった。

「それでどーするってんだよ、人様の屋敷から勝手に連れて来て。お前みたいな若造に子供なんて育てられるわきゃねーだろ」
「誰が育てるなんて言ったよ。ここに置いてるのは、あくまでも仮だよ、仮。他に預け場所が見つかったら、すぐにそっちにやるって」

 ガミガミと説教くさいことを言うイーガルに、アルもふてくされたように返した。
 二人は今、アルが暮らす家の中にいる。下町のほうの、小さな家がぎちぎちと隙間なく立ち並ぶ一角は、隣近所の住人も貧しい人たちばかりで、雑然として忙しない。アルが盗みのために忍び込むような豪勢なお屋敷や、その周辺の閑静で落ち着いた景色とは、天地ほどの開きがある。
 アルとイーガルは、その狭い家の中の、小さなテーブルを挟んで向き合って座り、顔を寄せてひそひそと言葉を交わしていた。口を動かしながら、二人の視線は揃って部屋の隅にあるソファに向かう。
 大人二人が並んで座ったらかなり窮屈そうなそのソファには、すやすやと気持ちよさげに眠る子供。
 幼い女の子というのは、ぬいぐるみとかを抱きながら、くるんと丸まって可愛く眠るものとアルは思っていたのだが、ソファの上で両手両足を伸ばし、かーかーと寝こけるディーは、いぎたない、としか表現できなかった。ぱかっと開いた口の端からは涎が垂れているし、何かを食べる夢でも見ているのか、時々むぐむぐと毛布に噛みついている。
 言っちゃなんだが、子供というより、野生の猿に近い。

「まったく、こんなことになってるなんてなあ」
 イーガルが太い息と一緒に吐き出すように言った。

 アルは、目的の宝石は見つからなかった、ということはすぐにイーガルに報告したが、ディーのことは言っていなかった。あれから一週間以上経った今夜になって、新たな打ち合わせのためにアルの家を訪れたイーガルが、そこでぐうぐうと眠っている女の子を見つけて仰天した、という次第だ。
 しょうがなくアルがこれまでの成り行きを説明して、今に至る。
「そんで、その預け場所ってのはちゃんと探してるんだろうな」
「……まあ、それなりに」
 アルがもごもごと言葉を濁すと、イーガルは疑わしそうにじろりと睨みつけてきた。
「まさかとは思うが、お前」
「なに」
「子供相手に変な気を起こそうってんじゃねえだろうな」
「冗談だろ?!」
 目を剥いて怒鳴ってしまってから、慌てて自分の口を塞ぐ。ちらっとまた目をやったが、ディーはまるで気にすることなく寝息を立てていた。

「確かに性別でいえば女なのかもしれないけど、ほとんど動物みたいなもんだよ。言葉くらいは通じても、常識ってもんを持ってないしさ」

 ディーをこの家に連れてきた最初の夜から、アルがどれほどその非常識な言動に驚かされたか、語り尽くせないくらいだ。
 話す、食べる、寝る、以外のことはほとんど出来ない、と言ってもいい。普通の人間が当たり前にしている基本的な生活習慣が、ディーにとってはどれもこれも 「なにそれ?」 というものであるらしいのだった。
 風呂に入れ、と言っても通じない。風呂ってなに? という顔をされる。服を脱いで湯に浸かるんだよ、と説明すれば、アルの前で堂々と服を脱ぎ始める始末だ。慌てて止めて、隣の家に住むアイダという中年女性に頼み込み、ようやく洗ってもらうことが出来た。
 ディーがあまりにも汚くみすぼらしい格好をしていたから、アイダは、アルが浮浪者の子供を拾ってきた、と解釈したようだ。イーガルのように、「あんたみたいな若造が子供の面倒なんてみられるわけない」 という文句をさんざん言われたが、それでもディーをせっせと綺麗にして、食事もとらせてくれた。
 こんなボロをまとってちゃ子供なんだかゴミなんだかわかりゃしない、と酷いことも言いつつ、もう嫁に行った娘が小さい頃に着ていたという洋服もどっさりくれた。貧しい暮らしに不平不満を並べたり、あれこれと口うるさいところもあるが、アイダは基本的に人のいい女性なのだ。
 というわけで、今のディーは、他の子供の中に混じっても、あまり違和感のない外見をしている。ガリガリの痩せっぽっちなのはどうしようもないが。
 そう──それもちょっと迷う点だ。ディーは非常に痩せていて、背も低い。どう見ても、七歳か八歳、それくらいの大きさにしか見えない。しかしなにしろ、ディーの育った環境は尋常ではないため、それが順当な発育の経過であるとは、到底思い難い。本当は何歳なのだろう。
 もちろん、本人にも、「おまえ何歳になるんだ?」 と訊いてみたのだが、
「?」
 と首を傾げられただけだった。予想はしていたけど。

 年齢も、正式な名前も、どうしてあんな地下の部屋で暮らしていたのかも、まったく判らない子供。
 厄介極まりない。

「さっさと手離したほうがいいぞ。お前みたいな半人前が、こんなお荷物しょい込んで、のっぴきならない事態になったらどうする。お前にあの子供のこれからの責任を取る義務も義理もねえ」
 重々しい口調で忠告してくるイーガルの言葉は、まったくもって、もっともだった。アル自身、本当に心の底からそう思うのだ。
「……だから、そうするって。道端にぽいっと投げ捨てておくのも寝覚めが悪いだろ? ここに置いておくのは、引き取り手が見つかるまで」
 その引き取り手はいつ見つかるんだ、という問いが再び飛んでくる前に、アルは話の舵を別方向へ変えることにした。これ以上堂々巡りの会話を続けるのは御免だ。

「大体、イーガルからもらった情報が間違ってたのが、そもそもの発端なんだからな」

 責任転嫁である。しかしイーガルは、うぐ、と言葉に詰まって口を大きく曲げた。彼にとっても、自分のその手落ちは痛恨事であるらしい。
「それについちゃあ、悪かったよ。あの情報屋は仕事に手を抜くやつじゃないし、俺もすっかり信用しきってたからなあ」
「まあ、突発的な用事や、人の気分までは、事前の情報で掴めるもんじゃないからね」
 髪の薄くなった頭部に手を当てて撫ぜるイーガルが、なんだか落ち込んでいるようだったので、少し悪いことをした気分になったアルは慰めるようにフォローした。これまで、イーガルから渡された情報に齟齬があったことはない。実際にその情報屋はきっちり仕事をする人物なのだろう。
 そのきっちり仕事をする情報屋でさえ、地下の部屋のことも、その中に監禁された子供のことも、知ることは出来なかった。それほど厳重に隠されていたということだ。

「……しかし、あのエルドラン公がねえ」

 イーガルは自分の頭に手をやったまま、呟くようにそう言って、ソファで眠る子供に目を向けた。
「政治的な手腕に優れ、国王に全幅の信頼を置かれている、って御仁だぞ。もとは身分だってそう高くはなかったのに、自分の見識と人脈作りで側近にまでのし上がった、正真正銘の実力者だ。温厚篤実で、身分の上下に関わらず広く人望があるって評判なんだがなあ」
「──だからこそ、だろ」
 声を低めたアルに、イーガルは片目を眇めて、さらに顔を寄せた。

「……魔力持ちだって?」
 と、小声で問う。アルは頷いた。

「間違いない。でかい野犬を一瞬で吹っ飛ばした」
「なんとまあ」
 驚くような、呆れたような顔をして、イーガルがまじまじと子供の寝顔を見る。ディーはむにゃむにゃと何事かを呟きながら、ぼりぼりと栗色の髪の毛に包まれた頭を掻き、ついでに片足を上げて、ソファの背もたれ部分にどんと置いた。寝相が悪いので、上半身がずり落ちそうになっている。
「てえことは、この子はエルドラン公の娘かね」
「だろうね。公には息子が二人いるらしいから、それ以外の、表には出せない──つまり、メイドとかに産ませた子供かな。うっかり作っちゃった子供が魔力持ちだったなんて、そりゃ外聞が悪いどころの話じゃない」
「まあ、普通の子供なら、母親ともども金を渡してどこかに放り出せば済むことだろうが、魔力持ちじゃあなあ。もしもバレたら、失脚もんだ」
「人柄についての評判が高ければ高いほど、余計に逆風は大きいだろうね。だからなんとしても隠そうとした、ってことじゃないかな」
 いっそ殺してしまおう、という結果にならなかったのは、エルドラン公にも情があったということなのだろうか。しかし、地下に閉じ込め、教育も与えずただ生かしておくのが、果たしてディーにとっての 「幸運」 であったかどうかは判らない。
「だが、魔力持ちなら、なおさらお前の手には負えねえだろう。子供の面倒を見たこともねえのによ」
「けど、イーガルだって、奥さんも子供もいない侘しい独り身だったのに、ガキの俺を拾ってちゃんと育ててくれたじゃないか」
「バカ野郎、俺はその時にはもう三十代だったんだよ、今のお前とは違う。それに女房はちゃんといたんだ、逃げられただけで」
「自慢にならないことを堂々と言うなあ」
 アルは笑ってしまった。

 イーガルに女房がいて逃げられた、というのは本当だ。アルを拾った当時、すでに彼は一人暮らしで、家の中は非常に汚く荒んでいた。それから十年以上かけて、アルとイーガルはなんとか二人で生活を立て直し、少々歪ながらも家族としてやって来たのだ。
 その間、好ましく思う女性だって何人もいただろうに。血の繋がりも何もない邪魔なコブを追い出せば、新しい奥さんくらいは出来たかもしれなかったのに。「結婚は懲り懲りだ」 なんて嘯いちゃって。

「……ひょっとしてお前、あの子と自分を重ねてんのか」
 ふいに複雑な表情になったイーガルに言われて、アルは過去の追憶から意識を戻した。笑みを浮かべて、そちらに向き直る。
「違うって。何度も言うけど、ディーをここに置いておくのはほんのちょっとのことだよ。俺だってこの齢で子持ちになるつもりなんてないからさ」
「ならいいが。しかし、ほんのちょっとでも、大丈夫なのかよ。子供ってのは想像以上に手がかかるぞ。俺もクソガキにさんざん手こずらされたから、よくわかるんだ」
 イーガルが腕を組み、うんうんとしたり顔で頷く。そのクソガキに容赦なく鉄拳制裁を喰らわせてきたのはどこのどいつだ、と言い返しそうになるのを呑み込んで、アルは首を横に振った。
「いや、どっちかってーと、逆だ。ディーは、想像以上に、手がかからない」
 なにしろとにかく、素直なのだ。いや、それを一口に素直と表現していいのかどうか迷うのだが。従順、というのとも違うような気がするし、うーん、なんていうか。
 黙ってろ、と言えば、本当にいつまでも黙っている。じっとしてろ、と言えば、息をしているのか心配になるくらい身動きしない。口を開けろと言えば口を開けるし、その中に何を放り込めば確認もせずもぐもぐ咀嚼する。寝ろと言えばころりと横になる。
 手がかからない。確かに、そうとしか言いようがない。ディーをこの家に連れてきた当初、暴れたり、騒いだり、あれこれとうるさく詮索されたりすることを予想してげんなりしていたアルも、正直なところ、かなりホッとした。しかし。

 ──しかし、これじゃまるで本当に、人形だ。

 ディーは、指示や命令に対して、まったく疑問を抱かないのだった。疑問を抱く、ということすら知らない。子供にありがちな、なんでどうして、という言葉が、ディーの口から出てくるのを、アルは聞いたことがなかった。
 子供というものはもっとわがままで、自己主張が激しくて、片時もじっとしていないような、そういう生き物だと思っていたのだが、ディーにはどれも当てはまらない。
「……とにかくさ、少しの間だけだから、今は大目に見てくれよ」
 アルがそう言うと、イーガルは大きなため息を吐いて、わかったよ、と返事をした。
 よっこらと椅子から立ち上がり、何をするのかと思えば、落ちすぎて床にくっつきそうになっていたディーの頭を持ち上げて、寝やすいように直してやっている。なんだかんだ言って、イーガルも冷淡にはなりきれないのである。
 その寝顔を見て、アルも小さな息をついた。

 口を閉じてじっとしてろ、と言えばその通りにするディー。
 もういいよ、と言わない限り、いつまでも、いつまでも、じっとしている。
 だが、その時の顔は、あまりにも虚ろで、魂が抜けているように見える。
 一体どういう育て方をすると、こんな人間になってしまうんだろう。


          ***


 アルは、朝昼晩の食事以外の時間、机に向かって何かをしていることが多い。
 何をしているのかは、ディーには判らない。「机の上のものは絶対に触るなよ」 とアルに言われているので、少し離れた位置から眺めるだけだ。そこにはたくさんの部品が無秩序に散らばっていて、それが何であるのかも判らない。
 アルがその何らかの作業を行っている時は、ディーはソファに座ってじっとしている。「大人しくしてろよ」 と言われたからそうしているのだが、アルは何度かちらちらとこっちを振り返っては、「生きてるな?」 と確認してくる。そしてまた机を向いては、小さな声で何事かを唸るのだ。彼がなぜそんな行動をするのかも、ディーにはさっぱり判らない。
 ソファに座り、ぼーっとアルの背中を見る。
 アルが上下黒い服だったのはあの夜だけで、普段の彼は白っぽい洋服を着ていることが多かった。細かい作業をしているのか、まくり上げた袖から伸びた手が慎重に動くのを、ディーはほとんど頭の中を空っぽにして、ただ眺め続ける。
 地下の部屋よりも、ここはうんと明るくて、うんと暖かい。動かず、何も話さずにいるのは同じだが、灰色の壁を見ているよりは、アルの背中を見ているほうがずっとよかった。
 何がいいのか、それもよく判らないのだけど。
 でも、アルは動くし。時々、こっちを向くし。
 アルの目が自分に向けられると、ディーのお腹の中が、ちょっとだけほっこりとする。

「だーっ、ダメだやっぱり落ち着かねえ!」

 アルがいきなりそう叫んで、顔だけでなく身体ごとくるりと振り返った。
「ディー、俺は決めた」
「うん」
「お前に文字を教えてやる」
「文字?」
「なんにも出来ることがねえから、そうやって座ってるだけなんだろ。じゃあ簡単だ、出来るようにすればいい。文字を覚えりゃ本も読めるし、買い物だって出来る。そうだそうしよう、ずーっと黙ってられると、かえって気になって気になって仕事が手につかねえ!」
 アルはヤケクソのようにそう言って、手に持っていたネジを机の上にぽいっと放り投げた。



「──『聖者の話』 って、知ってるか?」
 アルは、ディーに文字を教える傍ら、いろんな話もしてくれた。近所の人たちの話から、お伽噺の類まで。お伽噺のほうは、小さな頃、育ての親に聞かされたものなのだという。「イーガルの読み聞かせはヘタクソでヘタクソで聞いていられなかった」 と言うわりに、彼はそれらの話のすべてをそらで言えるほど、細かいところまでよく覚えていた。
 聖者の話、というのも、そうやって聞かされたものらしい。
「せいじゃ?」
「うーん、なんつーか、心の綺麗な、偉い人、だな。たぶん」
 アルの説明は時々いい加減だ。
「むかーし昔、聖者が楽土を求めてこの地にやって来たんだってさ」
「らくど?」
「楽園とか、天国とか、そういうもの」
 楽園も、天国も、ディーは知らない。首を傾げると、アルは困ったように黒髪の中に手を突っ込んで掻き廻した。
「……えーとそうだな、心配も、苦労もなく、楽しいことだけがあるところ、っていうか」
「ふうん」
 ディーは返事をして、それを思い浮かべようとしてみたが、非常に難しかった。

 楽しいことだけが、あるところ。

「聖者は、癒しの力と救う力を持っている。その力で、人を集め、土地を得、信頼を結び、天と契約を交わして国を作った。『ここを人々にとっての楽土にしよう』 と。つまり、この国の王族は聖者の子孫、ってことになる。今でも王族は、聖なる力ってやつを身の裡に宿すらしい。……ま、見たことはないから、本当かどうかはわからないけどさ。要するに、それだけ王家は神聖なものだから敬って従え、ってことなんだろうな」
 国というのは、そうやって嘘か本当か判らない伝説で自らを飾り立てることによって威信を保とうとするもの、なのだそうである。肩を軽く竦めるアルの顔には、皮肉な笑みが乗っていた。
「一方、この世界には、『魔の力』 ってやつもある」
 アルの口許から、笑みが消えた。
「魔の力は、聖なる力と対をなすものだ。傷つける力、害する力と言われている。聖者に逆らった人々が、邪悪な願いで求めて手に入れたという力だ。こっちは伝説の類じゃなく、実際にある(・・・・・)。百人に一人、あるいは千人に一人の割合で、そういう力を持った人間が生まれてくる」
 それから少し、声の音量を下げた。
「……本当のところ、聖者の話は、こういう特殊な力を持った人たちに対する危惧から作られたんじゃないか、って俺は思うんだけど。つまり、弾圧って意味でさ。そりゃ、もしもそんな力を持った人たちが台頭してきたら、国にとってはあまり歓迎できたことじゃないからな」
 アルは難しい顔をしているが、話している内容も難しい言葉がいっぱいだ。
「とにかく、魔の力を持つ人間ってのは、ただでさえ怖れられがちだが、この国では特に、聖者、つまり王家に仇なす存在として、極端に忌み嫌われるんだよ。単刀直入に言うと、迫害の対象になる。だから自分の子供がもしもそういう力を持っていたら親は必死になって隠すし、周囲に知られないように本人にもきつく言い含めるもんなのさ」
 何も悪いことをしていなくても、とぼそりと呟いた。
「だからいいか、ディー」
 アルが真顔になって、ディーの顔を覗き込む。
「お前も、これから面倒なことになりたくなきゃ、自分の力は決して人に見せないようにしろ。魔力持ちだと知れたら、疎外されて、しんどい思いをするだけだからな。意識的に抑えるよう、努力するんだぞ。いいな?」
 そこまで言って、口を閉じた。
 そして、ディーの顔をじっと見てから、真面目な表情のまま、改めて問いかけた。
「……俺の言ったこと、わかった?」
「わかんない」
 だよなあー、とアルはガックリ両肩を落とした。



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